患者を支える「看護」の現場(4)

取 材:2026/6月
―看護師を志望した理由を教えてください
自分は人と密に関わる仕事をしたくて看護師になりました。実は中学・高校の頃は教員を目指していたんです。やはり人と関わる仕事がしたいという思いがあって。
ただ受験勉強が嫌になってしまって、近くに看護専門学校もあったことから、看護の仕事もやりがいがありそうだなと思うようになりました。看護学校教員という道もありますし、最初に思い描いていた目標から大きく外れてはいないと思っています。小学生の頃、採血で10回以上差し直しになったことがあって、本当に辛い思いをしました。もし自分が看護師になったら、子どもにそんな思いはさせたくないな、と当時から感じていたのを覚えています。
―実際に看護師になってみて、最初はどうでしたか
入職したばかりの頃は、自分に知識が全然ないことを痛感しました。国家試験の勉強で覚えたことも忘れてしまっていて、毎日が勉強でした。先輩から「この点滴は何時間で落とすか知ってる?」と聞かれて調べる。「この病気の治療は知ってる?」と聞かれて、また調べる。そんな毎日でしたね。
新人研修も充実していて、点滴の手技などは練習用の器材で十分に練習してから患者さんに実施できました。それでも最初は緊張して、手が震えました。
患者さんとの会話も難しかったです。何を話したらいいのかわからなくて、症状を聞くだけで終わってしまうこともありました。1年目の後半になってようやく職場に慣れて、先輩方の話し方を見ながら患者さんと自然に話せるようになっていきました。

―西6病棟の雰囲気はいかがですか
本当に先輩方が優しいです。未経験の技術でも「やってみたいです」と言うと、「じゃあサポートするからやってみよう」と背中を押してくれます。また、自分の考えを話した時も頭ごなしに否定されることがありません。「その可能性もあるね。でもこういう方法もあるよ」とアドバイスしてくれるので、とても意見を言いやすい環境です。教わる側の気持ちをよく理解してくださっていると感じますし、自分も後輩に対して同じような関わり方ができる看護師になりたいと思っています。
それから、先輩方の経験量や知識量はやっぱり自分とは比較にならないですね。たとえば、患者さんの持参薬の名前も詳しく知っているし、CT画像を見てもパッとわかってしまうし、患者さんの呼吸のわずかな変化も見逃さないし、看護力のレベルの高さにいつも驚いています。そういう環境で仕事していると、自然にもっと勉強しなきゃって思いますね。
―仕事の楽しさを感じるようになったのはいつ頃ですか
今3年目ですが、2年目くらいからですね。
患者さんについてカンファレンスで話し合うのが好きなんです。みんなで情報を出し合いながら、「この患者さんにとって何が一番良いんだろう」と考える時間が楽しくなりました。
それから、自分は脳外科の仕事がとにかく大好きなんですよ。脳外科の患者さんは回復が目に見えることが多くて、例えば寝たきりだった患者さんがリハビリで立ち上がれるようになったり、自分では無理だと思っていたことができるようになったりする。その変化を一緒に喜べることが本当に嬉しいです。
以前、「ひとりで車椅子に座るのは無理」と言っていた患者さんに対して、スタッフみんなで励ましながら関わっていった結果、本当に座れるようになったことがありました。患者さんの可能性を引き出せたと感じた時は、「役に立てたな」という達成感があります。

―3年目になって新たな気づきはありましたか
大きかったのは、耳鼻科の終末期がん患者さんとの出会いです。ケースレポートの発表も控えていたので、緩和ケアについて勉強しながら意識的に関わりました。
脳外科では、急性期治療が終わるとリハビリという流れが比較的明確です。しかし緩和ケアには決まった正解がありません。身体の痛みだけでなく、患者さん本人の気持ちや家族の思いも含めて考えなければなりません。痛みの緩和ひとつとっても、薬だけではなく、家族がそばにいることや、室温の調整など、人によって必要な関わり方が違います。「この人には何が必要なんだろう」と考え続けましたが、最後まで本人の本当にしたいことを十分に引き出せず、悔しさが残りました。
1,2年目までの自分は、決められたルーティンワークとして看護をしていたと思います。でも今回は、もっと「自分の意図を持って」看護したいと考えるようになりました。そうしたら、すごく考えることが多くて、参考書だけでは足りず、論文まで読んで勉強しました。それでも正解は見つかりませんでしたが、患者さんを理解したい、何とか力になりたいという気持ちは以前よりずっと強くなりました。
―将来はどんな看護師になりたいですか
患者さんやご家族の本当の気持ちを引き出せる看護師になりたいです。
緩和ケアを経験して、終末期の患者さんやご家族が抱えている思いを聞き出すことの難しさを感じました。言いたくても言えないことや、本人を気遣って言葉にできない思いがあると思うんです。だから、その人に合った関わり方を見つけながら、本音や希望を引き出せるようになりたいと思っています。まあ、でも今はそれより、もっとたくさん知識をつけ、早くリーダー業務を担えるようになって、支えてくれた先輩方に少しでも恩返しできたらと思っています。


