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011 薬剤師

治療の主役「薬」の現場(6)

取 材:2026/4月

 

―入職の経緯を教えてください
 

 14年前、中途採用で入職しました。34歳で当時子どもはいませんでしたが、出産しても薬剤師として長く働き続けたい、そして総合病院で病棟業務を学びたいという思いがありました。それまで調剤薬局や単科の病院勤務を経験してきましたが、総合病院の採用は少なく、市立病院の募集が出るのをずっと待っていました。幸いなことに、ホームページで募集を見つけて、すぐ応募しました。

 

― 病棟薬剤師について教えてください
 

 当院の病棟薬剤業務部門は、専任薬剤師5名とセントラル兼務の病棟担当薬剤師4名、計9名で構成されています。入院患者さんの薬物治療を安全かつ確実に支えるため、医師や看護師など多職種と密に連携しながら業務にあたっています。
 


― 病棟ではどんなお仕事をされていますか
 

 入院時には持参薬の鑑別からスタートします。これは、お薬手帳や紹介状などをもとに、現在の服薬状況を正確に把握する作業です。とくに注意しているのは、入院してから主治医が投与する治療薬と重複がないか、また相互作用と言って、ある薬が他の薬の作用を強めたり、弱めたりする影響がないかを確認しています。もし、そうした問題を発見した場合は、医師へ疑義照会を行います。

 

― ひとりで仕事する場面が多いのでしょうか
 

 ナースステーションでは薬剤師は自分一人ということが多いです。しかし、決して孤独な現場ではありません。当院には、「一人で抱え込ませない」「仲間の成長をみんなで支える」という文化があります。業務が集中する際にはサポート薬剤師が配置され、チーム全体で支え合う体制が整っていますので、私も安心して働くことができます。
 


― 高齢の方は沢山お薬を飲んでますよね
 

 そうですね。ですから、患者さんとの初回面談では既往歴やアレルギー歴についてもお聞きしています。他にも、電子カルテから腎機能・肝機能などの検査値を確認し、主治医が投与する薬や、その投与量が適切かも評価します。他にも、日々の服用を自己管理できるか、看護師による管理が必要か、といった点は看護師と相談しながら判断しています。

 

― 手術のために入院する方も多いですね 
 

 当院は急性期医療を担っていますので、周術期の薬物管理も薬剤師の重要な役割です。まず抗血栓薬、いわゆる「血液サラサラのお薬」の中止期間を適切にとっているかを確認します。サラサラのまま手術を受ければ、出血が止まらなくなってしまいますから、手術リスクを抑える重要な確認事項です。ほかにも、糖尿病の方は手術当日に食事を摂れませんので、高血糖だけでなく、低血糖の予防も必要です。このように、薬剤師は安全な手術のために専門的な立場から深く関わっています。
 


― 入院では副作用が出る薬も使われますね
 

 抗がん剤や麻薬、ステロイドといったハイリスク薬が開始される際には、医師の説明のあとに、薬剤師からさらに丁寧に説明しています。入院中の副作用や治療効果は継続的にモニタリングしており、何か変化があれば副作用の軽減策や、治療効果の向上のために医師へ積極的に提案しています。
 

― 投与量の調整が難しい薬もあると聞いています 
 

 決められた量を投与しても、患者さんの体に実際どれだけ届いているかは、計測してみないとわからないこともあるんです。濃度が低いと薬が効かず、濃度が高いと副作用が出るという場合、濃度を丁度良い幅の中に収めなければいけません。そのために行うのが、TDM、治療薬物モニタリングです。血液中の薬物濃度の解析をして、それをもとに主治医に最適な投与プランを提案しています。患者さんの治療効果の最大化と副作用リスクの軽減を両立し、同時に医師の負担軽減にも貢献しています。
 


― 思った以上に治療に関与していますね
 

 病棟薬剤師は、患者さんの詳細な情報、検査値、医師や看護師の記録を電子カルテで常に把握しています。その情報をもとに、治療や手術に密接に関わりながらチェック機能を働かせ、さらに医師へ提案も行うなど、薬物治療の安全性向上のために日々努力しています。このように、患者さんへの服薬指導から、持参薬の管理、処方変更への迅速な対応、退院時の調剤薬局や転院先との連携まで、病棟薬剤師の仕事は非常に幅広く、私も忙しく働きまわっていますよ。

 

― 病棟薬剤師の面白さはどこにありますか
 

 何よりのやりがいは、ベッドサイドで患者さんと直接向き合えること。患者さんの不安や、治療に対する疑問、つらい副作用に対し、薬剤師は専門知識を活かして寄り添っています。そうした中で、医師や看護師に最適な薬の治療を提案できる点に、病棟の仕事の魅力があると私は感じています。
 


― 治験委員会事務局の責任者もされていますね
 

 治験というのは新薬の臨床試験のことです。新しい薬を患者さんに試すには、安全性について通常以上の注意と配慮が必要です。そのために法律で定められているのがIRB、すなわち治験審査委員会の設置です。当院でも、医師・看護師・薬剤師・事務局・外部有識者が委員会を構成し、協力しながら治験の安全性と倫理性を継続的に審査しています。

 

― そこでの薬剤師の役割を教えてください
 

 薬物療法の専門家として重要な役割を担っています。まず、治験薬の安全性評価を行い、次に治験計画の妥当性を確認しますが、併用禁止薬や除外基準に該当しないかといった確認もしています。また、薬剤の保管、調剤、返却、廃棄に至るまで薬剤管理のサポートも行います。そして、想定される副作用への対処法を確認し、投与に携わる看護師とともに現場の体制整備などにも関わっています。この業務は、薬剤師としての専門性を活かしながら、「未来の医療をつくる」という大きな使命に貢献できる喜びがあります。
 


― 2児の母でもあると伺いました
 

 はい。入職後、不妊治療への理解も得ながら約5年で第1子を出産し、その後第2子も授かりました。第2子の出産時には夫の転勤があり、最大3年の育休制度を活用して、1年半は家族で他県に引っ越し、その後1年半は私と子供だけ苫小牧に戻り、3年のブランクを経て職場復帰しました。その後は育児短時間制度を利用した勤務を3年続け、今年から子どもが小学生になりましたのでフルタイム勤務に戻っています。

 

― 両立を支えた環境は何ですか
 

 職場の理解と制度の充実が大きいです。保育園や学童などの社会的な支えもあり、親に頼れない状況でも両立できました。特に育児短時間勤務や子供看護休暇は大きな助けになりました。勤務時間を柔軟に調整できる点も、家庭ごとの事情に合わせられて良かったと感じています。

 

― 復帰時の不安と乗り越え方は
 

 復帰前は大きな不安がありました。特にシステム面は忘れている部分も多く戸惑いましたが、徐々に感覚を取り戻しました。また、同じように復帰する人たちと不安を共有できたことも支えになりました。職場の上司からも前向きな言葉をかけてもらい、安心して戻ることができました。
 


― 育児経験が仕事に与えた影響は
 

 大きく変わりました。子どもは思い通りにならない存在ですから、一人ひとりの個性を尊重する視点が身につきました。職場も同じで、スタッフそれぞれの個性を見ながら上手に協力することを意識するようになりました。子育てで忍耐力や長期的な視点も養われ、それは管理職としての考え方にも良い影響を与えています。それから、人と人との関わりの大切さをより強く感じるようになりました。子供がピアノの先生と抱き合って喜んでいる姿を見て、病院は患者さんを支える仕事ですから、私もこういう人と人とのつながりを大切にしたいなと思いました。後輩にも、長い人生ですから仕事もプライベートもどちらも大切にしてほしいと伝えたいですね。

 

― 若手の教育でも中心になっていますね
 

 入職したばかりの薬剤師は、ベテランの看護師や医師を前に緊張して、遠慮してしまうこともありますよね。そんな時は、先輩薬剤師が丁寧に寄り添います。当院には、 「一人で抱え込ませない」「仲間の成長をみんなで支える」 という文化があります。ですから、病棟業務の流れやコミュニケーションの取り方まで、段階に応じてしっかりサポートしています。とくに私たちが配慮しているのは、無理のない業務量で、着実にステップアップさせること。そして、困った時にすぐ相談できる先輩がいる安心感を提供すること。そうした中で自然と自信がつく環境を用意すること。この3つです。
 


― 心強いですね
 

 その通りです。数年後には、医師や看護師からも頼られる存在へと成長できるでしょう。私も、「チームで支える安心の環境」に守られながら、「一人で立つ力」を備えるまでに成長できたと思っています。私たちのチームに加わって、一緒に患者さんのために働きたいという方、是非見学においでください。

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