ここからメインメニュー

メインメニューここまで

ここから本文です。

007 薬剤師


治療の主役「薬」の現場(2)

取材:2026/5月
 

― まず、薬剤部の仕事について教えてください
 

 病院薬剤師の仕事というと、調剤のイメージが強いかもしれません。もちろん調剤業務は基本ですが、それだけではありません。注射薬の管理、抗がん剤の無菌調製、病棟での服薬指導、医師や看護師への情報提供など、患者さんの治療を薬の面から支える仕事を幅広く担っています。例えば調剤業務では、医師の処方箋どおりに薬をそろえるだけではなく、用法・用量に問題がないか、薬の飲み合わせや重複投与はないかを確認しています。 この仕事は処方監査と言って医療安全のために欠かせませんから、私も緊張感を持って臨んでいます。

 

― 1989年から勤務されているそうですね
 

 はい。当時は外来処方がすべて院内処方だったので、とにかく毎日が忙しかったです。朝からずっと立ちっぱなしで調剤に追われていました。今のような電子カルテはなく、処方箋はすべて手書きでした。読みやすい字で書いてくれる先生ばかりではなかったので、処方箋を読めるようになるまで苦労しました。当時はまだ、「薬剤師は医師の指示通りに調剤する人」という見方が強かった時代です。疑義照会をするにもかなり気を遣いました。
 



― 今とは薬剤師の立場も違っていたのですね
 

 かなり変わりました。今はチーム医療の一員として、薬剤師が積極的に治療へ関わることが当たり前になっています。転機の一つは、病棟活動に対して診療報酬上の評価が始まったことでした。ちょうど私の大学時代で、病院薬剤師の将来に希望を感じたのを覚えています。当院でも外来処方を少しずつ院外へ移行する流れの中で、病棟業務が本格的に始まりました。私は婦人科と循環器内科の混合病棟、その後は産婦人科病棟を長く担当しました。婦人科のがん患者さんに関わる機会も徐々に増やしていきましたが、今までなかった仕事ですから、とにかく試行錯誤しながら病棟薬剤師の仕事を形にしてきたと思います。

 

― 病棟の仕事を詳しく教えてください
 

 患者さんが安全に薬物治療を続けられるよう支援しています。持参薬や薬歴を確認して重複や相互作用がないかを調べ、検査値や病状を見ながら処方内容を確認し、医師の処方が適切かどうかを監査しています。正しい飲み方を教えるだけでなく、治療の効果を十分に発揮させ、副作用を最小限に抑えるように努力しています。ほかにも、患者さんが退院後に薬を自己管理できるかも評価しています。病棟カンファレンスにも参加して、医師や看護師に提案することもあります。今は電子カルテの時代ですから、検査結果や画像も簡単に確認できるので、薬剤の提案や治療の支援を行いやすい環境になって嬉しいですね。

 


― がん治療との関わりについて教えてください
 

 はい。最初は婦人科がんの患者さんとの関わりがきっかけでした。当時はまだ、抗がん剤治療に薬剤師が深く関わる体制はありませんでした。たとえば、抗がん剤も病棟で看護師が混注していたのですが、薬剤師が抗がん剤の調製を専用の安全キャビネットの中で行うように変更しました。薬剤師自身が薬剤に曝露しないよう防護を徹底しながら、無菌的に調製しています。ほかにも、抗がん剤は「レジメン」と呼ばれる事前登録された治療計画でしかオーダーできない仕組みになっていて、薬剤師はその内容を事前に確認しています。投与量やスケジュール、患者さんの検査値や状態まで細かくチェックして、副作用を抑えた安全な治療ができるように努めているのです。かつて主治医が何でもひとりで担っていた時代に比べると、安全の仕組みが何重にもかかるようになりました。私もそうした変化に貢献できて、非常にやりがいがありましたし、薬剤師として良い経験ができたと思います。
 



― 業務の機械化も進んできたのでしょうか
 

 そうですね。私が入職した頃は、薬袋印字システムや錠剤分包機もありませんでした。新病院へ移る前までは、アンプルピッカーもありませんでした。注射薬を一本一本、人の手でそろえていましたよ。現在はシステム化が進み、処方データをもとに自動でピッキングできるようになっています。その分、薬剤師はもっと患者さん一人ひとりのために時間を使うことができるようになりました。ひたすら作業に明け暮れた昔と比べると、格段の進歩だと思いますね。

 

― DI業務も重要だと伺いました
 

 DI業務は、Drug Informationの略で、薬の情報を管理・提供する仕事です。目立つ仕事ではありませんが、とても重要です。医師や看護師からの問い合わせに対応し、副作用情報や供給停止情報、薬の採用・削除情報などを院内へお知らせしています。最近は医薬品の供給不安定も増えているので、代替薬をどうするか、治療をどう継続するかを医師と一緒に考える場面も多いですね。そうした時は、自分の引き出しの多さを活かせていると思います。
 


― 長く働く中で、ご自身の働き方にも変化があったそうですね
 

 私が入職した頃は、業務内容に男女差がありました。女性は注射業務にほとんど関わらなかったので、あとから知識を身につけるのに苦労しました。また、当時は結婚や出産を機に退職する女性薬剤師も多かった時代でした。私自身も、仕事を続けるかどうかかなり悩みました。でも、病棟薬剤師の仕事が増えるなど、ちょうど病院薬剤師の業務が転換期を迎えている時期でした。だから、「今ここで辞めたくない。私もスキルを磨きキャリアアップしたい」という強い思いがあったのです。夫や家族の理解、そして他職種の女性職員が産休・育休を取得したことにも背中を押され、産休・育休を取得して働き続ける決心をしました。当院の薬剤師としては第一号でした。あの時、勇気を出して続けて良かったと思っています。
 


― 今の薬剤部はどんな雰囲気ですか
 

 今は男女関係なく、入職後に調剤、注射調剤、無菌調製などを幅広く研修します。女性も管理職として活躍していますし、業務の垣根もなくなりました。昔のように「これは男性の仕事、女性の仕事」という考え方はもうありません。私も色々悩みながら働き続けて、今年60歳を迎えますが、女性が生涯を通して成長し続け、活躍できる職場を作ることができたことは、私の仕事人生の中でも一番嬉しいことですね。

 

― これからはどんな仕事をしていきたいですか
 

 はい。私より上の世代の薬剤師は、皆60歳で退職していました。だから、自分が60代になってどう働くべきか、正直かなり悩みました。でも振り返ると、産休・育休を取得した時も「第一号」でした。それなら今度は、60代の働き方の「第一号」になってみてもいいのかな。もちろん、まだ手探りです。これまで、薬剤師の仕事が進化する時代を生きてきました。そうした変化を起こす喜びを知っているからこそ、シニアの働き方を変える先導役になって、試行錯誤する姿を見せていくのも面白いかもしれません。

本文ここまで

ここからサブメニュー

職員インタビュー

サブメニューここまで

  • 前のページに戻る
  • ページの先頭へ戻る

ここからフッターメニュー

フッターメニューの文章は、読み上げされません