治療の主役「薬」の現場(1)
取 材:2026/3月
―まずは、これまでのご経歴を教えていただけますか
私は大学院卒業後、2004年に当院へ入職しました。以来、約22年間にわたって一貫してこの病院で薬剤師としてのキャリアを積んできました。現在は薬剤部長として、薬剤部全体のマネジメントを行いながら、現場の薬剤師たちがその専門性を最大限に発揮できる環境づくりに注力しています。
-どのような業務に携わってきましたか
これまで調剤業務、注射調剤業務、DI業務、病棟業務、製剤業務など、主要な業務に幅広く携わってきました。一つに特化せずオールマイティーに業務を担ってきたと思います。その中で、感染制御認定薬剤師の資格を取得し、専門性を活かしてTDM業務の立ち上げや感染制御室の立ち上げに関わりました。抗菌薬の適正使用や感染対策の推進において、薬剤師としての役割を形にできたことは大きな経験になっています。また、電子カルテ導入時には処方オーダーシステムの構築にも関わり、現場の運用を踏まえた仕組みづくりに携わりました。単に業務をこなすだけでなく、より安全で効率的な体制を作ってきたと自負しています。
―22年という長きにわたり、この病院で勤め続けてこられた魅力は何でしょうか
一番は「変化と成長」が常に実感できる環境だからだと思います。病院薬剤師の業務は、医学の進歩とともに常にアップデートが求められます。当院は急性期から地域医療まで幅広く担っているため、向き合う症例も多岐にわたります。毎日が同じことの繰り返しではなく、常に新しい知識を吸収し、それを患者さんのために還元できるという手応えが、私の原動力になっています。
―現在の薬剤部の体制について詳しく教えてください
現在は薬剤師17名と薬剤助手6名の、計23名体制で日々の業務にあたっています。病院の規模としては決して「大所帯」ではありませんが、その分スタッフ一人ひとりの顔が見え、連携が非常にスムーズなのが自慢です。

―具体的な業務内容はどのようなものがありますか
一般的にイメージされる調剤業務だけではありません。薬品管理、無菌調製、院内製剤、病棟業務、DI(医薬品情報管理)、マスタ管理、そして治験事務局の運営まで、非常に多岐にわたります。現在、当院では約1,800品目の医薬品を扱っており、これらを安全かつ適正に管理・供給することが私たちの大きな使命です。
―処方件数もかなりの数になりますよね
入院処方箋が月に約4,500枚、外来の院内処方が約200枚ほど動いています。年間に換算すると、およそ5万7,000件以上の処方に対応していることになります。これだけの数を、精度を落とすことなく、かつ迅速に処理するために、私たちはシステムと人の力の両面から安全管理を徹底しています。
―安全管理の面で、特に力を入れているポイントを教えてください
人的なミスを最小限に抑えるため、最新の「自動化システム」を積極的に導入しています。例えば散薬(粉薬)の調剤では、バーコード照合に加えて、実際に計量した重さをレシートとして記録に残します。錠剤の一包化においても、自動分割分包機で1錠ずつ写真を撮影し、「いつ、どの薬が、どのパックに入ったか」の証拠をすべてデジタルデータで保存しています。
―注射剤管理にもシステムを導入していると伺いました
はい。当院では「アンプルピッカー」という自動注射薬払出装置を活用しています。最大の特徴は、患者さんごと、かつ「1回の投与単位(1施用)」ごとに注射薬をセットして払い出す点です。さらにトレーごとにバーコードを貼付し、病棟で看護師が患者認証を行うことで、物理的に誤投与を防ぐ仕組みを構築しています。ここまで徹底した管理を行っている病院は、地域でも珍しいのではないかと思います。
―こうした機械化を進める目的は何でしょうか
目的は二つあります。一つは「100%の安心安全」です。どれほど熟練した薬剤師でも、人間である以上、見間違いや思い込みのリスクはゼロにはなりません。そこを機械が担保することで、患者さんの安全を絶対的なものにします。もう一つは「業務の効率化」です。単純な作業を機械に任せることで、薬剤師がよりクリエイティブな業務、つまりベッドサイドでの服薬指導や医師への処方提案といった「人間にしかできない業務」に時間を割けるようにするためです。
―調剤薬局のお仕事とは大きく違いますか
やはり病棟業務が大きな特徴だと思います。医師や看護師など多職種と連携しながら、患者様一人ひとりに合わせた薬物療法に直接関わることができます。処方内容を確認し、重複投与や相互作用がないかをチェックするほか、副作用の発現防止や早期発見にも関わっています。
―患者さんとの接点も多いでしょうね
病棟に専任の薬剤師が配置されているため、入院から退院まで継続して患者さんに関わることができます。薬の効果や使い方を丁寧に説明し、不安や疑問の解消に努めています。ほかにも、医師へ提案を行う場面が多いですし、チーム医療の一員として薬剤師は重要な役割を果たしています。調剤だけでなく、現場で患者様に寄り添いながら、医療に直接貢献できる点が病院薬剤師の大きな魅力だと感じています。
―新人教育はどのように進めていますか
最初の半年間で、病院薬剤師としての「基礎体力」をしっかり身につけてもらう教育プログラムを組んでいます。4月はまず調剤業務からスタートし、5月からは無菌調剤や注射剤の払い出し業務を経験します。これらを1ヶ月ごとのローテーションで繰り返し、10月には当直を任せられるレベルまで引き上げるのが目標です。
―教育の中で特に伝えていることは
単に「薬を正確に揃える」だけでなく、「なぜこの薬なのか」を考える「処方監査」の能力を磨くことです。用法・用量の適正さはもちろん、患者さんの腎機能データや過去の副作用歴、重複投与がないか。まずは「何かおかしい」という違和感に気づけるようになることが第一歩です。その気づきをどうやって医師への疑義照会や提案に繋げるか、そのプロセスを先輩薬剤師がマンツーマンで指導します。
―当直業務への不安を感じる新人も多いと思いますが、フォロー体制はどうなっていますか
いきなり一人で放り出すようなことは絶対にありません。まずは日中の業務で信頼関係とスキルを構築し、次に先輩と一緒に日直に入って日勤・夜間の動きをシミュレートします。周囲のスタッフが「これなら安心して任せられる」と判断して初めて自立となりますので、安心してください。
―多職種との連携、いわゆる「チーム医療」への関わりについて教えてください
当院では薬剤師が積極的に病棟へ出向き、チームの一員として機能しています。ICT(感染制御チーム)では抗菌薬の適正使用を提案し、PCT(緩和ケアチーム)では患者さんの痛みを和らげるための鎮痛薬の調整を行います。また、NST(栄養サポートチーム)やPUT(褥瘡対策チーム)など、活躍の場は非常に広いです。
―医師や看護師とのコミュニケーションで、変化を感じることはありますか
昔に比べると、医師からの信頼や期待が格段に高まったと感じます。最近では、医師の方から「この患者さんの薬剤の血中濃度シミュレーションをして、最適な投与量を提案してほしい」と直接相談を受けることも珍しくありません。薬剤師がカルテや検査値を読み解き、根拠を持って提案することで、治療方針がダイレクトに変わっていく。これこそが病院薬剤師として最大の醍醐味であり、やりがいです。
―採用にあたって、職場の雰囲気や働きやすさについても伺いたいのですが
当院の大きな強みの一つは、ワークライフバランスの良さだと思います。有給休暇の取得率も高い方ですし、男性職員の育児休業取得実績もあります。私自身も、スタッフには「仕事だけでなくプライベートや家族も大切にしてほしい」と伝えています。
―公的病院ならではのアドバンテージですね
そうですね。福利厚生がしっかりしているのはもちろんですが、何より「お互い様」という支え合いの文化があります。誰かが休みを取る時は周りがフォローする、定時で帰れるように業務を整理する。こうした「ソフト面」の充実は、長く働き続ける上で非常に重要だと考えています。
―立地的なアピールポイントは?
苫小牧は札幌に近く日帰り圏内ですから、何かと便利です。札幌で開かれる学会や催し物にも出やすいですし、ご家族もお出かけしやすいから満足度が高いのではないでしょうか。千歳空港に近いのも良い所ですね。
―今後の薬剤部の展望、そして求める人物像を教えてください
DX(デジタルトランスフォーメーション)をさらに推し進め、薬剤師がもっともっとベッドサイドへ出て、患者さんや医師と対話できる時間を増やしていきたいと考えています。そのためには、新しいことに物怖じせず、チャレンジできる好奇心旺盛な方が必要です。
―認定薬剤師や専門薬剤師を目指す方へのサポートはありますか
もちろんです。当院には専門性を高めるための豊富な症例がありますし、学会参加や資格取得のための支援体制も整っています。特定の分野で「このことなら、あの薬剤師に聞こう」と言われるようなプロフェッショナルを目指す方を、組織として全力でバックアップします。
―最後に応募を検討されている方へメッセージをお願いします
病院薬剤師の仕事は、命に直結する緊張感のある仕事です。しかし、自分が学んだ知識が患者さんの笑顔に繋がった時の感動は、何物にも代えられません。調剤だけで終わるのではなく、治療のプロセスそのものに関わり、チームの一員として誇りを持って働きたい。そんな熱意をお持ちの方と、ぜひ一緒にこれからの薬剤部を作っていきたいと思っています。

