■所在地:苫小牧市字高丘
■所有者:北海道大学
■管理者:北海道大学苫小牧研究林
▲北海道大学苫小牧研究林内にある森林記念館の外観
昭和初期の面影を残す建築
市街地の北東に位置し、樽前山麓の東南部から勇払平野の西側丘陵部を占める北海道大学苫小牧研究林(旧地方演習林)は、明治37(1904)年北海道大学の前身である札幌農学校によって開設されました。昭和10(1935)年、研究林の一角に動物や樹木の標本、研究の道具などを貯蔵・保管するために標本貯蔵室が建設されました。昭和38(1963)年には、教会風建築のホールが貯蔵室東側に増築されました。
▲林学実科の苫小牧演習林合宿実習の様子(北海道大学蔵)
昭和52(1977)年には、標本資料の収集と展示のため新たに森林資料館(1,213㎡)、気象観測・動植物の生態観察のための森林観測塔(31m)が建設され、標本貯蔵室の資料は、森林資料館へ移管されその役目を終えることとなります。
▲茶色い壁の部分が旧貯蔵庫で、白い壁の部分があとから増築された部分。旧貯蔵庫が国登録の有形文化財となっている
昭和63(1988)年からは、森林記念館として再整備の手が加えられ、標本等が置かれています。森林記念館は、貯蔵庫として使われていた木造平屋建てバットレス※1付きの下見板張※2に駒形屋根※3の牧畜舎風建築の部分と、あとから増築した切妻造り屋根※4の教会堂風建築の部分があり、内部は吹き抜けとなっています。屋根に付けられた明かりを採り入れるための3連になっている連続窓や横壁の真ん中付近に付けられた横長窓など時代的な特徴が現れています。
平成12(2000)年、当時の面影を残す建築が評価され、昭和10(1935)年に建設された木造平屋119平方メートル部分が国登録指定文化財として登録されました。
▲将棋の駒のような形をした駒形屋根
※1 バットレス
壁を補強するため、その壁から直角に突出した形で作られる壁
※2 下見板張(したみいたばり)
建物の外壁に長い板材を横に用いて、板の下端がその下の板の上端に少し重なるように張る方法のこと
※3 駒形屋根(こまがたやね)
ギャブレル屋根とも呼ばれ、屋根を正面の形状が将棋の駒のような形になっている屋根
※4 切妻造り屋根(きりつまづくりやね)
日本建築の屋根で、本を半開きにして伏せたような屋根
苫小牧研究林とは
▲自然環境豊かな研究林(写真提供:苫小牧写真連盟)
苫小牧研究林は、明治37(1904)年、内務省から胆振国勇払郡苫小牧村所在国有林が札幌農学校に所管換 を受け、苫小牧演習林として発足した。現在の面積は約2,700haである。当地は北海道中南部太平洋側の工業都市苫小牧市の市街地に隣接し、札幌から約60kmで、研究林の中では大学キャンパスから最も近い位置にある。
森林の約25%が人工林で、その他は広葉樹二次林と天然林で占められている。落葉広葉樹が優占する天然林もその多くが風害跡などに成立した林で、ほぼ全域が火山灰性土壌で覆われ、冬期は積雪が少なく土壌は深く凍結する。複数の湧水河川が流れ、大規模な湿原にも隣接している。
現在は、生物群集の維持メカニズムの解明、森林と河川の相互作用、生物遺伝子資源の保全手法の開発、森林の多目的利用と共生系のモデル作りなどを課題とした研究を行っている。本林は都市部に隣接しているため、地域住民や観光客の休養緑地としても親しまれている。
(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター Webサイトより)