「中庭展示−Court Installation」は、当館の中庭展示スペースにおいて、その空間を活用したインスタレーションを紹介するシリーズ企画です。第15回目となる今回は、美術家・磯崎道佳(1968〜)のホウキをモチーフとする作品を紹介します。
「世界には塵ひとつない」と銘打つ本展では、人の形を彷彿とさせる巨大なホウキが台座の上に設置されます。本展開催にあたり磯崎は、「社会の歪みを検証するひとつの試み」として、「立派な台座に、ばかばかしいほど大きなホウキを彫像のように展示したい」と語っています。その言葉の背景には、公共空間における記念碑的な肖像彫刻などに多く見受けられる、台座という高みから見下ろす視点に潜んでいる権力者側の力の誇示に対する批判精神があったといいます。そこからは、普遍的な社会問題ともいえる、体制や権力者によって虐げられるマイノリティ(少数派)への真摯なまなざしと同時に、磯崎のアーティストとしての問題意識やその出自を読みとることができます。
本インスタレーションは、風にたなびく枝やビニール袋を中庭の屋上に設置し、それらとホウキを結びつけることで、「ダンス=掃除」をおこなわせるというユニークなプランが下敷きになっています。予期せぬ風に踊らされる巨大なホウキの姿は、高みにありながらも明確な意志を持たずに右往左往する権力者の姿、あるいは、マイノリティが支配者になり変わり権力の座についたのちにおこなう喜びの舞といった見方が可能であり、見る者に多様な解釈や想像の余地を残します。この機会に、現代社会のあり方に対する深い思索とユーモアに満ちた磯崎の作品にふれてみてください。
開催概要
期 間:2020年10月10日(土)~12月13日(日)
会 場:中庭展示スペース
開館時間:9:30~17:00(入場は16:30まで)
休 館 日 :月曜日(ただし11月23日は開館し、翌日休館)
観 覧 料 :一般300(240)円、高大生200(140)円、中学生以下無料
※( )内は10名以上の料金です。
※免除規定がありますのでお問い合わせください。
※年間観覧券でもご覧いただけます。
※あわせて常設展、企画展も観覧できます。
※11月3日(火・祝)は無料観覧日(イベント等は実施しません)
(4.90 MB)
(画像をクリックすると、チラシのPDFが開きます)
磯崎道佳(いそざき・みちよし)プロフィール
1968年茨城県水戸市生まれ。北海道ニセコ町在住。
1996年多摩美術大学大学院美術研究科修了。多様な表現形態により、見るものの好奇心を刺激し、新たな視点への気づきを促す作品を制作。
面識のない者同士による手紙の交換を目的とした「パラシュートとマキオ」(2002年〜)。雑巾で等身大の動物を制作する「ぞうきんぞうプロジェクト」(2004年〜)、参加者と巨大バルーンを制作する「ドーム/DOMEプロジェクト」(2005年〜)など、共同制作に基づいたアート・プロジェクトも展開している。
関連イベント
担当学芸員による展示解説会「スライドトーク」
本展および同時期開催の企画展「紙とアート」の展示内容について担当学芸員がスライドを用いて解説します。
日時:2020年10月11日(日)①10 : 00−10 : 40 ②14 : 00−14 : 40
会場:当館研修室
対象:一般 25名 ※先着順。定員になり次第締め切り
参加料:無料
※直接会場へお集まりください。
※展示室へのご入場については当日有効の観覧券が必要です。
ご観覧の際の留意事項
・感染症拡散防止のため、開館時間や入場時の受付方法等が変更になる場合があります。ご来館前に最新情報をご確認ください。
・ご来場の際にはマスクの着用、体調の優れない場合のご来館の回避など、お客様ご自身におかれましても、感染予防のご協力をお願いします。
同時開催
企画展「紙とアート:吉田傑 ダンボールといきもの」
会期:2020年10月10日(土)~12月13日(日)
会場:企画展示室 第1展示室
企画展「八王子千人同心と蝦夷地」
会期:2020年10月10日(土)~12月13日(日)
会場:企画展示室 第2・3展示室